スマトラ沖地震津波に対する日赤国際医療救援に参加

掲載開始日:2005.02.21

名古屋第二赤十字病院整形外科
佐藤公治 JR2TDE

災害時非常診療ユニット(ERU)前にて
【はじめに】
 2004.12.26日曜朝7時59分、スマトラ沖地震(マグニチュード9)発生、その三十分後のインド洋沿岸に大津波が押し寄せました。現地の助かった人によると椰子の木の倍程度の大波、水の壁が三回やってきて全てを流していったとの事です。その被害は、沿岸各国に及び震源地に近いスマトラ島北西部を中心にインド洋全体に及び27万人の人が亡くなりました。私は日赤の国際医療救援要員の第二班として派遣されたので報告します。

【日赤の動き】
 日赤は国際赤十字のアピールを受け、12月28日直ちに国際医療救援チーム15人が出動しました。1月4日スマトラ島北西のアチェ州ムラボーに入りました。震源地に近く、海岸から2から3kmのところまで海水に波が押し寄せました。街の市街地は完全に崩壊しました。波の来たところと来ていない所の被害の差は大きいです。日赤は災害時非常診療ユニット(ERU)の展開、現地病院の支援、モーバイルクリニックを三本柱に活動しました。我々二班は1月19日に日本を出発し22日にムラボーに入りました。

【チュナディン病院支援】
ムラボーにある唯一の郡立病院(100床)は、海から離れていてぎりぎり被災は免れました。しかし多くの患者や避難者が押し寄せ混乱。また職員が亡くなりまた多く人が家を無くし、半分の職員が出勤できず機能しなくなっていました。多くのNGO、軍が応援に来ていました。私は整形外科医としてこの病院の外傷治療支援を行いました。救急外来、外科病棟、手術などを行いました。地震の後、三週間たっていましたが、未だ混乱していました。

【ORARIの活動】インドネシアアマチュア無線連盟
 災害直後の活動は、AB2QVがホームページに紹介しています。
http://www.oraripusat.net/http://www.qsl.net/ab2qv/tsunami.htmを参照してください。
ムラボーでは、このチュナディン病院の検査室の一角を利用してORARIが非常通信を行っていました。ORARIのMEULABOH CAMPAIGNです。SUDRAJAT氏によると1月5日よりムラボーで活動開始し、ムラボーとバンダアチェ、ジャカルタ、シンガポール等と非常通信しているとのことでした。HFは、ICOMのHF機が一台有り、ダイポールアンテナを立て、7.0550, 7.0600MHz LSBで遠距離と交信。市内はVHF、145.500MHz FMを使用していました。144Mのリグはアルインコ製。モービルにも積んでいました。ムラボーには、レピータはありませんでした。運用者はUNGGUL SUDRAJATさんYC0SES、DJOKO HARDJANTO さん YC2JRIの二名。YB6ZAKクラブ局を三人で三月末までの交代なしで、無線機近くの床で寝泊りしていました。かなり疲れていました。144Mのハンディトランシーバーが五台程度欲しいと話していました。

【他のインフラ】
 現地インドネシア赤十字(PMI)は無線のライセンスを取っておらず赤十字固有の無線は使えませんでした。またインドネシアのアチェ州は紛争地域で軍が無線を許可していません。日赤は衛星携帯電話Thuraya、M2、M4を持ち活動しました。Thuraya スラーヤ衛星携帯電話(GSM携帯電話+GPS機能付)は南の空が開けていないと、なかなか繋がらず、衛星経由とGSM経由を切り替え、さらにアンテナの受信状態をみてかけていました。室内での待ち受けはできず連絡に苦慮しました。市内のGSM携帯電話や日本の国際仕様のボーダフォンは1月24日頃(被災後一ヶ月)から使えるようになりました。有線電話は依然不通、電気は1月20日頃から使えましたが何度も停電していました。ブレーカーがよく落ちていました。テレビのある家は2m口径のパラボラが赤道上の衛星を向いていました。臨時のラジオ放送も始まっていました。

【まとめ】
 地震と津波による被害で、家が壊れただけでなく波に家全てを持っていかれ土台しか残っていないところも多かったです。家の無い避難者(IDP)も112万人といいます。各国の協力により水、食料、テントは配給され交通の便の良い所では充足しつつあります。そして仮設住宅の建設も始まりました。しかし小さな離島など橋が流され交通の便利の悪いところでは、被災状況も把握できず救援の手が届いていないところもまだ多くあります。復興までにはかなりの時間を要ります。本当に未曾有の災害でありました。多くの亡くなられた方のご冥福を祈ります。
 今後も赤十字の一員として活動して行きたいと思います。包帯などを送るだけでなく包帯を巻きに行こう。