D-STARを利用した非常通信訓練2005

名古屋第二赤十字病院アマチュア無線クラブJE2ZND
www.jarl.com/je2znd/
代表 佐藤公治 JR2TDE
jr2tde@jarl.com

【はじめに】
 平成17年10月23日日曜日午前9時から11時まで第9回JARL愛知県支部非常通信訓練が行われた。今回は従来のFMモードの他、D-STARモードが正式に訓練に取り込まれた。
 D-STARは平成16年に東海地方愛知県内に設置された。昨年は、当クラブとしてJARL訓練後に実験し9局と交信し、またインターネットに接続し情報収集に利用し災害時にも有用であろう事が実証された。

【訓練概要】
 この訓練は、JARL愛知県支部非常通信ネット委員会が企画し毎年10月に行われている。本年は愛知県本部局としてJI2ZKC(愛西市防災ハムクラブ)が担当・運用した。9時から10時まではFM,DV,DDモード共にサブ基地局と一般局の交信である。コールサイン、RSレポート、QRA,QTH、等の内容で各地との伝搬をチェックした。10時から11時は、サブ基地局から本部局への報告と集計を行った。他のサブ基地局と本部局とのQSPなどである。我々は144M,430M,1200M,D-STARでこの訓練に参加した。

【訓練準備】
 アマチュア無線機はいつも使用していることが重要で、いざというとき使えないのでは非常時に役立たない。防災無線や構内無線が年一回の訓練でのみ使用しているため補修がいたらずハプニングがあることはよく聞く。当クラブの管理するレピータは、常に利用し点検整備している。電源関係も院内の点検整備で非常電源が供給される様になっている。屋上のシャックには、144M,430M,1200M,D-STAR用ID-1を整備準備した。9月4日の愛知県総合防災訓練、10月12日名古屋大学防災訓練にも参加し伝搬も上々であることを確認した。愛知県赤十字無線奉仕団にも協力を要請した。
 DDモードは、画像付き掲示板サーバーを立ち上げることとした。WindowsのBlackJumboDogというソフトを利用した。Windows98が走る一昔前のMMXノートパソコンにインストールしたが遅すぎで実用的でなかった。Windows2000のデスクトップで運用した。このインストールにはJN2AES上野OMにご尽力頂いた。ID-1は、自局をJE2ZNDに設定。サーバーのIPアドレスはJARLから借りた指定IPアドレス10.1.4.57を設定した。一般局からは、相手局 JE2ZND, RP1 JP2YGE(最寄りのレピータ) A, RP2 JP2YGE(ゲートウェーレピータ) G,とID-1を設定し、ブラウザソフトでhttp://10.1.4.57をアクセスすると掲示板が立ち上がる様にした。
 しかし直ちに運用できたわけではない。コールサインと無線機名が合わないと接続できないなどチップスがあった。相手局をJE2ZNDとせずインターネットへのゲートレピータ局のコールとするとインターネットには繋がるものの掲示版サーバーには繋がらない。Pingをゲートウェイやサーバーに対して掛けて確認する。これでレスポンスがないと次へ進めない。繋がらないときは、パソコンのネットワーク設定とID-1の設定を見直す必要がある。古いOSはネットワークの変更を再起動にせねばならず、やはり新しいOSは便利である。

【訓練の実際】
 144Mは一般局として訓練、各地のサブ基地局を探してQSOした。430Mと1200Mは八事FMレピータを使用してサブ基地局としての訓練を行った。一つの周波数にクラブ員一人が担当。コンテストをこなすようにQSOしログに記入していった。レピータのお膝元なのでハンディとイヤホンで運用してみた。


430Mで23局、1200Mで18局と交信でき本部局に報告した。VoIPによりWIRESが430MでJN2AESノードから#0622ルームにつながり県外局5局ともQSOできた。またEcholinkが1200MにJN2AES-Lから繋がり県外局8局ともQSOできた。音質もよく県外との連絡もVoIPの技術で可能なことが実証された。愛知県本部全体の結果は144Mが66局、430Mが106局、1200Mが73局、合計で延べ249局が参加した。JARL 愛知県支部

【D-SATRでの訓練】
 1200DVモードはID-1を電源と共に外に持ち出し運用。FMモード同様に呼ばれた一般局とQSOした。愛知県内D-STARレピータは熱田、春日井、昭和区と3局あるがまだまだ普及していない。常時使用局は少ない。
 音声という点ではFMと同じだがDVモード独特の音声である。遠くなると復調できなくなり宇宙語のごとくもがもがとなる。モービル運用との局とは聞きづらかった。自動応答の設定がOFFであったがONの方がトレースができてよかった。今回は各地のD-STARレピータにお邪魔してCQを出すロールコールと違って各地からの待ち受けで運用した。毎週土曜7時のD-STARロールコールは有用だった。またD-STARのメーリングリストであらかじめ訓練をお願いした。結局8局と交信できた。

【DDモードが繋がりにくい】
 DDモードが繋がりにくかった。これは以前から感じていたが、FMレピータが働くとマスクされてしまう。FMレピータとD-STARレピータの設置場所は30mほどは離れている。しかし1200Mは広帯域アンプで混変調受けやすいのか。特にDDモードは容易にFMに負けてしまう。FMレピータ設置場所へのD-STARレピータ設置には工夫が必要だろう。実際は常にFMレピータが稼働しているわけではないが、FMが出るとpingが通りにくくなり実用性が落ちる。以前のパケット通信の様にスケルチを見ていて発信するわけではないので繋がらないときは繋がらない。タイムアウトしてしまう。今回は結局1局のみであった。

【災害時に広域無線LAN】
 D-SATRは、災害時に広域無線LANができる可能性を秘めている。モービル運用でのインターネット閲覧や災害地からの映像をインターネットで送ることもできる。また今回のように画像付き掲示板で情報収集も行える。DDレピータがあるので広域に使用できる。しかしFMよりはエリアは狭い。エリアはDVがFMの8割程度、DDはFMの半分のところで十分な電界強度が無いと繋がらないのが実感である。今回も25km程度離れた安城や刈谷からはFM,DVは十分交信できたがDDは繋がらなかった。

【災害時飛行船プロジェクト】
 D-STARは各方面で広域無線LANとして注目されている。万博で気が付かれた方もあるかもしれないが、中部大学梅野教授らがバッファローと共同して無線LANの実験をしていた。あれは、ただのアドバルーンではなかったのだ。あの時は微弱2.4G無線LANを搭載していた。それがソーラーで稼働するところがミソである。


以前、いくつかの実験を行った。430/1200MのFMハンディー機を乗せてゲートウェイレピータの実験したところ有効だった。飛行船は方向や高さが制御でき、ただの風船とは異なる。高さは50-150mは上がる。災害時に救護所の近くに上がれば救護所のサインにもなり、また情報発信の基地局になりうる。またこれにレピータが乗ることで広域で無線通信を行うことが出来る。ソーラーで稼働し災害時の無線中継に使えないかという発想だ。当クラブはこのプロジェクトに3月より参加している。

【D-STARのIPアドレス】
 これを申請および設定しないとゲートウェイレピータを通じて地域外と交信できない。また自動応答の機能で呼ばれた局に自動的にルーティングができる。現在のJARLの借用IPは、プライベートアドレスでJARLのイントラネットの外からは繋がらない。できれば外からもアクセスできるamprのIPが取れると良いと思う。

【今後の課題】
 USB接続のカメラを繋いで、web cameraを運用し定点観測できるようにしたい。D-STARとFMレピータとの融合。他の防災ハムクラブとの連携やネットワーク回線作りをD-STARやVoIPの技術で構築していきたいと考えている。