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受験日1週間くらい前になるともう朝型の体調のリズムになるように心がける。朝は5時30分までに起床し、耳慣らしのために練習カセットテープをモノラルラジカセで最小音量ボリュームをしぼって聴き電文を書き取る。試験では以前に落ちたときに雨だれの音でほとんど聞き取れなかったからだ。二度と失敗は繰り返さない。今回は何が何でも合格するのだという意気込みでとにかく必死であった。しかし、毎日同じ事をしていると飽きてくるので、借りてきたパールハーバーのビデオを見て意気高揚させて、興奮も冷めないうちにまた受験勉強にうちこんだ。

受験日2日前は学科の勉強が片付いたので、ピコモールスのランダム受信練習を9分だけやった。カセットテープの内容がそのまま試験に出るとは限らないので、とにかくあせらずに一字一字間違えずに聞き取るランダム受信練習を重点的にした。
受験日前日の午前中はランダム受信を20分程度やった。9分を2回程度である。午後からは受験日に使用する鉛筆を久しぶりにカッターで削った。通信術用の4Bの濃い鉛筆を2本と家中にあるHBの鉛筆を8本くらい選んで削った。夜は早めに寝た。
受験日当日の天気は昼から雨が降る予報であった。何か気が進まないが電車に乗れば何とかなるだろうと思い、駅まで行った。予定より一本早い0817発の下り新潟行きに乗ろうと往復切符を緑の窓口で買い求めようとしたら、ワンデイフリー切符なるものを駅員にすすめられた。見附駅から白山駅まで往復1500円の交通費であった。新潟まで往復2000円以上かかると思ったら、ちょっと得した気分であった。
新潟まではほとんど景色を眺めながらピコも聴かずにボーとしていた。最近の信越線はうるさくて疲れる。俺たちの学生時代はうるさく喋る人なんて電車の中にはいなかったのになぁ。人ごみに不快感を覚えながら0921に新潟駅に着いた。
新潟駅に着いたら喫煙場所のコーナーでコーヒーを飲みながら一息ついた。電車はストレスがたまるのでついついタバコの本数が増えてしまう。ここで受験票をもう一度確認する。1100に試験開始で時間的に余裕があったが、受信練習がやりたかったので、0938新潟駅発の越後線に乗った。白山駅までは5分くらい乗っていただけなのに長く感じられた。
0943に白山駅に着いた。ここでもまた喫煙コーナーでジュースと喫煙をする。充分時間がある。土地改良会館まではもう下調べしてあるので、NTT新潟支店のT字路を左に曲がった。改築中のようでバリケードの片隅に3級・4級アマチュア無線従事者国家試験会場入り口と貼り紙してあったので、そこに吸い込まれるように入った。
まずロビーで一服。かなり内装が新しい。1000から真空管の三定数を求める式の確認とピコのランダム受信練習の9分を2回してみた。ピコの練習が正確に符号が書き取れたのでひょっとしたらこれは合格できるのではと思った。
試験会場の5階の大会議室も新しくなっていた。雨も小降りだが雨だれの音が聞こえない。これなら大丈夫かな?少し自信が持ててきた。筆記用具と受験票を鞄から取り出しながら、周囲を見渡すと受験者と思われる学生らしい男子が3人、中年の方が自分を入れて3人、高齢の方が1人と計7人の受験者であった。入り口のそばでは試験官が将棋を指しながら雑談をしている。1人の試験官が言った「試験は15分後に説明を開始するので、それまでリラックスしてトイレ行ったりしてくださいネ!」自分はすぐトイレに行き喫煙コーナーで一服した。その後は5分間の沈黙。試験の説明が始まってもまだ完マルの付録のモールス単語帳を見ている人がいた。
試験の概要の説明が終わると通信術の答案用紙を配られた。「一番最初に行う試験は通信術で...」と試験官が取り出したのはモノラルラジカセではなく最新のMDラジカセであった。これには一瞬微笑しました。自分は今までモノラルのラジカセで練習してきたのに試験ではMDラジカセになるとは。
しかし、考え様によっては有利かもしれない。気のせいか試験前でのアルファベット26文字の受信練習時におけるMDの音質はカセットの独特な音質より聞き取りやすかった様に感じた。
試験が始まると1分間25文字のスピードであった。とにかく落ち着いて聞き取り書き取り双方にミスの無いように、無心に聞こえてくる信号を文字にして書いていった。書き終わったら「A
LEADERSHIP IS THE WORLD FRIENDSHIP」と文になっていた。
学科の法規は4アマの基本問題に無線電信呼び出し送信事項と国際法規の問題を加えた内容だった。工学は4アマの問題と電信のキーイングの不具合状態と波形の対応の問題と電波伝搬の問題、といった内容。工学、法規共に内容としては完マル一冊だけで対応できる構成である。
学科の試験後に会場のロビーに残り自己採点してみたが、法規はひっかけ問題を3問間違えて78点、工学は基本的なところを1問間違えただけで92点。法規はぎりぎり合格ラインといった具合。
これで合格を見込んで従事者の免許申請書を買って帰った。昼食は新潟駅ホームの立ち食いそばで天ぷらそばを食べた。新潟からの帰りの電車のなかで車窓から眺める春の田園の素朴な景色が印象的だった。
<終わり> |