TARC NEWS 322号 2016年9月30日230号記事の一部書き換えしました  http://www.jarl.com/tarc/
TARCNEWS
TDKアマチュア無線倶楽部
JM1ZOR発行責任者JM1EMK
JARL登録番号 10−3−49


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QSO Mode


JT65のススメ

成田 7K3OWM also JA0ASI 山下 信一

その特徴と実際の運用状況

  今回は前回のPSK31に続いてJT65について、実際の当局の運用状況を中心に、その特徴と使用して いるソフトウェアについてご紹介させていただきます。

タイミング良く “2013年JARL NEWS春号”にも「デジタルモードを始めよう」というタイトルでJT65の記事 が載っていますので、そちらも一読してみてください。

1、JT65(JT65A)の概要

 JT65は流星痕反射通信用に開発されたデジタル通信技術を、ノーベル物理学賞受賞のK1JT/Dr.Joe TaylorがEME(月面反射通信)などの微弱信号通信を目的として改良・開発した狭帯域通信モードWSJT の1つです。
後にHF帯にまで応用範囲が拡大され、このHF+50MHzモードをJT65Aと呼びます。ちなみに、144MHz、432MHzのEMEでのモードがJT65B、1296MHzのEMEモードがJT65Cとなります。

 JT65プロトコルは65-tone(65個のトーン)を使い、1270.5HzのサブキャリアをAFSK変調します。こ れを65FSKと言います。この変調方式はon-offキーイングよりも非常に効率が良く、さらにPSKよりも 周波数変動に対する許容度がはるかに高い特長があります。

 JT65用のソフトウェアはJT65モードの開発者であるK1JTが開発したWSJTと、後発のW6CQZ/ Mr.J.C.Large 氏が開発したJT65-HFの2つが主に使われているようです。

 JT65は、EME,HF,VHFなど目的に応じた信号に区分されていて、WSJTではそれらの目的に応じた信号に 対応しておりますが、操作はやや難しくな ります。

 一方のJT65-HFは、HF帯通信用のJT65Aだけに対応し操作も比較的簡単に行えるようになっています。
これからHF帯で JT65にデビューされる方は、当局のように、まずJT65-HFでスタートするのが賢明で す。したがって以下、JT65はJT65Aの範囲の話に限り、通信用ソフトウェアはJT65-HFについての説明 になります。

2、JT65-HFのダウンロード

 JT65-HFはフリーソフトです。ダウンロードページは 種々のアマ無線用ソフトウェアのページにリン クがあります。
今日時点での最新バージョンは、「JT65-HF.Ver.1.0.9」となり、ダウンロードファイル は“setup-JT65-HF-1093.exe”です。日付: 2011-11-24、サイズは7.1MBです。

 リグとの接続には、前回ご紹介したようなインターフェイスが必要です。テクニカルシャック製のDIF-3plus使用ではWindowsXPにも、Windows7にも対応していますが、Windows10/64bitではRS232C-USB変換ケーブルはドライバー付きの国内メーカー品でないとうまくゆかないかもしれません。

JT65Aモードの受信は、RTTYやPSK31のように無線機のダイヤルを合わせただけではなかなか受信で きません。その主な原因は、信号受信とデコードを同時に行わない仕組みになっているためです。

つま り、1分毎に送受信を繰り返し、受信結果は受信完了後にデコードされます。RTTYやPSK31では、受信 と同時にデコードされるので、信号を見つければすぐに受信内容が確認できます。

しかし、JT65Aでは信 号を受信してもリアルタイムにデコードされないので、はじめて信号を受信した方はとまどうかもしれ ません。以下、ダウンロードページの一例です。

http://sourceforge.jp/projects/sfnet_jt65-hf/releases/

3、PC内時計合わせ用ソフトのダウンロード

 もうひとつ受信の際の重要な条件は、PC内の時計を正確にしておくことです。
JT65Aの交信では、毎 分0秒から送信/受信の動作に入ります。そのため交信する双方の局のPC内時計を正確に合わせておく 必要があります。
PCのインターネット時刻自動調整では間に合いません。時計校正ソフトでPC内時計を 日本標準時に正確に合わせてください。

なお設定誤差はほぼ1秒以内であれば交信できますが、相手局 の設定誤差を考えると±0.5 秒以内にするのが理想的のようです。
当局は時刻合わせのソフト「桜時計」 をインストールして使っています。JT65-HFを起動する前に、かならず「桜時計」を起動させます。

他に も種々の時刻合わせフリーソフトがありますので、使い易いものを選んでください。

 たまに、2秒以上時計がずれている信号の強い局に呼ばれることがあり、その際はその局がデコードで きないばかりか、その局の信号に被された他の局もデコードできなくなり、何回CQ出してもその局に 呼ばれている間はデコード不能に陥り、大変困ることがあります。

 PC内時計を合わせたら、あまり焦らず50秒間の信号を確実に受信してチョット待つ! JT65の受信に は忍耐が必要です。但し、次に送信しようと思ったら、今度は約10秒しか時間の余裕はありません。

http://www.vector.co.jp/soft/dl/win95/personal/se050672.html

4、JT65A運用周波数

 JT65Aの国際的な中心運用周波数は以下のようになります。モードはUSBです。
1.8MHz帯1838kHz
3.5MHz帯3576kHz
7MHz帯7076kHz
10MHz帯10139kHz
14MHz帯14076kHz
18MHz帯18102kHz
21MHz帯21076kHz
24MHz帯24092kHz
28MHz帯28076kHz
50MHz帯50276kHz


但し、2015年1月より新バンドプランが施行され、以来、国内でのJT65の運用周波数が追加となりました。国際的な慣習と違っているのは下記のような周波数となります。
1.9MHz帯・・・1.909MHz
3.5MHz帯・・・3.531MHz (3.576はJAで送信するとオフバンドです)
7MHz帯・・・・ 7.041MHz (主にJA国内同士だが、希にロシアなど近隣国が出てくることもあります)
*7MHz帯の7.076MHz は国際的な標準の周波数で、海外局は同一国内でもQSOできるが、日本の場合は、バンドプランで「海外局との交信に限る」と限定されています。
*最近VHF・UHF帯についてはJT65A,JT65B,JT65Cで以下の周波数が使われているようです。
144MHz帯:144.460MHz、430MHz帯:430.510MHz、1200MHz帯:1296.600MHz

5、JT65A運用の実際

JT65-HFの運用画面(最上段はJT-Alert画面)
JT65-HFの運用画面(最上段はJT-Alert画面)
<CQを出した時の一例>
例:相手CALL:W7YES、周波数:21076kHz、モード:USB、送信電力:10W 
画面の空いている周波数(隣接局より100Hz以上離す)にカーソルをセットするか、周波数欄に入力。
時間区分は偶数分(TX Even)を選択。下記の実際の送受信は約50秒間。
=============================================
CQ 7K3OWM QM05 (Call CQ欄チェック):02:00(UTC)-02:01(18:00になると自動送信開始)
7K3OWM K6GB DM14(画面の赤帯で表示):02:01-02:02(02:01:50になるとデコードされる)
K6GB 7K3OWM R-10 (赤帯を10秒以内にクリック):02:02-02:03(18:02になると自動送信開始)
7K3OWM K6GB R-12(赤帯で表示):02:03-02:04(02:03:50になるとデコードされる)
K6GB 7K3OWM RRR(赤帯またはRRR欄をクリック):02:04-02:05(02:04になると自動送信開始)
7K3OWM K6GB 73(画面の赤帯で表示):02:05-02:06(02:05:50になるとデコードされる)
または(TU YAMA 73)など
K6GB 7K3OWM 73(赤帯または73欄をクリック):02:06-02:07(02:06になると自動送信開始)
または(10W 4EL GL 73)をTX Text欄書込み後クリックなど
==============================================

相手Call、RSTが交換できればQSO成立。
相手のコールサインや信号強度dBはデコーダエリアの赤帯をクリックすれば、自動的に読取入力。

6、Hamlogへのログ変換ソフト、JT_Linkerのダウンロード

 以上の基本的な送受信ができるようになりましたら、便利な周辺ソフトをダウンロードしてみましょ う。
JT65-HFでは交信終了後、ログを自動的にADIFファイルに落としてくれる機能を持っていますが、 Hamlogへの即時送信・書き込みをするには、PSK31などのMMVARIと違い、別途両者を接続してくれるソ フト、JT_Linkerが必要です。

JT_Linkerの起動画面
JT_Linkerの起動画面
これも、アマ無線用フリーソフトのリンクからダウンロードできます。
PSK31のMMVARIでは、Hamlogへの自動書き込み機能がついていますが、JT65-HFは海外のソフトなの で仕方がありませんね。

 最新のバージョンは、Ver2013.03.22 で、Windows-7にも対応しています。大変 便利なツールです。
このソフトを使用するにあたって、当局の経験で気を付けなければならないことは、 コントロールパネル・プログラムの「Windows機能の有効化 NET Framework3.5.1」のスイッチをONに しておくことです。

http://ja2grc.dip.jp/~ja2grc/my_software/my_software.htm#JT_Linker

7、デコードされた局のデータが即表示されるJT-Alertのインストール

 デコードされた局がJT65Aの新局なのか、交信済みの局なのか、またどのカントリーなのか等すばや く知りたいところです。
なぜなら、JT65-HFではデコードされてから10秒以内に相手をコールしなけれ ばならないからです。
 JT_Linkerでハムログに転記して確認する方法では時間が間に合いません。
そこで、JT-Alertが大いに役立ちます。このソフトはデコードされた複数の局の過去の交信記録をリ アルタイムに表示します。

 交信済みの局がデコードされますと最上段にコールサイン-B4と表記されます。
もう一つはデコード画面のコールサインをクリックしても交信歴が2段目に表示されます。

 データーベースで使用する過去ログファイルはADIF形式で、JT65-HFが作成する機能を持っています。
したがって、JT65-HFをダウンロードしたら、同時にこのソフトも使えるようにした方が便利です。
但し、既にJT-Alertを使う前からJT65Aのログが存在する場合は、HamlogのデータをADIFデータに しておく必要があります。
これはHamlogの検索(S)の中の「複合条件検索と印刷」でADIF出力すること ができます。その後の交信データ追加は、出力したADIFをJT65-HFのログデータと同じ場所に置いてお けば、自動的に追加されて行きます。

JT-Alertの起動画面
JT-Alertの起動画面
 最新バージョンは、今日現在Ver.2.1.2でファイルは“Ham-Apps_JT-Alert_2.1.2_Setup.exe (size: 3.1 MB)”となります。他のソフトと同様、アマ無線用フリーソフトのリンクからダウンロードできます。
その他、姉妹フリーソフトで、JT-Macros(Ver.2.0.2)があります。これはJT65-HFのマクロ文を自由に 作成できるソフトで、使ってみる価値はあります。
JT-AlertおよびJT-Macrosのダウンロードはこちらからです。

http://hamapps.com/
http://30.pro.tok2.com/~jh3eca/JT-Alert_SetUP.html

8、RB( Reverse Beacon )NetworkとPSKR( PSK Reporter )

 JT65-HFの画面右下の、Enable RBとEnable PSKRにチェックを入れると、これらのネットワークに自 局の通信データがアップされます。

 詳細は、“JT65-HFの解説書”(次項の参考ウェブ(1)かJT65-HFをダウンロードしたpdfファイル)に 記述してあります。
世界中のRBNetworkまたはPSKRに参加アクセスしている局の受信データや位置がリ アリタイムに表形式またはマップ形式で表示されていて、電波伝搬の状態や自局を何局がどこでどの程 度の感度で受信しているかが一目で分かります。

 ためしに以下のウェブにアクセスしてみてください。

PBのウェブ画面 http://jt65.w6cqz.org/receptions.php
PSKRのウェブ画面 http://pskreporter.info/pskmap.html

9、参考になるウェブ

 今回の解説に関係する、その他代表的なホームページを以下に列挙します。

(1)http://okdeq.lolipop.jp/jt65
(2) http://iz4czl.ucoz.com/jt65-hf-setup.pdf#search=%27JT65+AFSK%27
(3) http://30.pro.tok2.com/~jh3eca/JT65-HF.html
(4) http://jg1pdg.blog.fc2.com/blog-entry-10.html
(5) http://homepage2.nifty.com/jn4vac/digital/digital.htm

あとがき

 以上、JT65A、JT65-HFおよび周辺ソフトについて、運用開始までの手順や実際の運用方法を当局の経 験を中心にお話をさせていただきました。

JT65Aに出ているほとんどのDX局は、出力10W以下で運用し ていますが、1W以下という局とも何回か交信しました。
また、アンテナもGPやDPの局も多く、手軽に DXがゲットできるモードといえます。
-25dB以下の微弱電波で、スピーカーから音が聞こえなくても、 画面に受信信号のドット(ウォーターフォール)が見えなくてもデコードできる場合があります。

また、 交信は1分おきでゆっくりしていて、且つ、ほとんどマウスのクリックだけで済みますので、一杯やり ながらでも気軽にQSOできるのも魅力です。
もちろん、JT65はDXCCのデジタルモードのカテゴリーに入 っています。皆さん、是非このモードにチャレンジしてみてください。

*PSK31でも解説いたしましたが、このモードもPSKと同様、免許の一括記載コード範疇であっても、電波型式の追加(F1D)、付属装置(コンピュータ変調装置)の追加が必要です。

(1)設備の増設、新規取替がなければ、総通に「届出」
(2)設備の増設、新規取替があれば、TSSに申請(TSS経由で総通)になります。
但し、増設、取替の総通への申請後、別途付属装置を届出するのであれば、TSSを通さなくても構いません。

*JT65、PSK-31等のデジタル通信に関する詳細な申請例は、JA0ASIのブログ 「デジタル通信-PSK31およびJT65Aの立ち上げと運用の実際」 http://ja0asi.cocolog-nifty.com/blog/を参考にしてください。

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