登米地域アマチュア無線クラブ 楽しもう フォックスハンティング!
フォックスハンティングとは
皆さん,フォックスハンティングという遊びをご存知でしょうか。Fox hunting
ですから「きつね狩り」ということになりますが,心やさしい?アマチュア無線家が本物のきつねをズドン!とやるのは趣味ではないですよね。実はハムの世界では,隠れて電波を発射する局をきつねに例え,そしてそれを探し出す人達をハンターになぞらえているのです。つまりアマチュア無線界で言うフォックスハンティングとは,電波の到来方向を探知してその発信源を探し出すゲームのことを意味しているのです。「電波発信源探索ゲーム」とでも言ったら説明なしで分かってもらえるでしょうか。決してマニアだけの遊びではありません。ハムなら,いやハムでなくても興味のある方ならどなたにでも楽しめるものです。簡単に入れてそして結構奥の深い遊びと思います。なお,同様の趣向のものを「たぬき狩り」と称している場合もあります。
ではこれからこのフォックスハンティングという楽しい遊びについて具体的にご紹介していきたいと思います。
競技方法
フォックスハンティングにはルールがあり,それに従って競技をし順位を決めます。ルールはその時々そして各主催者によっても異なりますが,一般的には概ね次のようなルールにより実施されます。
(1)移動手段
モービルか徒歩,もしくはその複合などの指定があります。モービルを使用する場合を特にモービル・フォックス・ハンティングと呼んでいます。
(2)使用周波数
現在は144MHz帯あるいは430MHz帯が主流です。しかしHF帯や50MHz帯などが使われる場合もあります。
(3)電波形式
使用周波数がV・UHF帯である場合はF3やF2が一般的ですが,HF帯においてはCWやAM系の電波形式が多いでしょう。
(4)制限時間
競技時間はスタートから2時間以内(○○時まで)などと限定されるのが普通です。
(5)受信装置
アンテナの種類や大きさ,方向探知の方式などについて制限されることもあります。
(6)競技範囲
あらかじめ明確にされる場合と,特に何も示されない場合とがあります。
(7)その他
競技中の電波発射は禁止,外部(固定局や見学者など)からの協力禁止,情報を他の競技者へ流さないことなど。またモービルフォックスハンティングの場合は特に,道路交通法規を守ることなどが盛り込まれます。
(8)順位の決め方
普通はとにかく早くフォックスを見つけた順序なのですが,車の走行距離などを加味する場合もあります。また,フォックスの発見順(時間)ではなく,決められたゴール地点に到達した順序(時間)でもって順位を決定するやり方もあります。
ハンターの設備・機器
ハンディ機ひとつでのフォックスハンティングも不可能ではありませんが,常識的には以下のような装備が必要です。
1 受信機(Sメーター付)+減衰器+ビームアンテナ
2 受信機+自動電波方向探知アダプター+専用アンテナシステム
1についてはオーソドックスタイプといえるもので,少々のノウハウさえ解っていれば,どなたにでも容易に準備できる設備・機器といえます。この方式のものは,手持ち式オールインワンタイプの製品が市販されています。自前のシステムの例として私が実戦で何度も使用しているものを図1に示します。モービルで使用する場合は回転機構と方向表示装置も必要です。2の「電波方向探知アダプター+専用アンテナシステム」はハイテクタイプといえるもので,電波の到来方向を自動でLEDに表示させるものです。このアダプターについては,だいぶ以前に完成品の広告を見た記憶もありますが,今はおそらく販売されていないと思います。そういう訳で使用者の大半は自作されているようです。なおこのシステムはアンテナを機械的に動かす必要がなく,移動中でもFBに働きますのでモービル向きです。大別して2つの方式がありますのでその特徴を<表1>に示します。(詳細については文末に記載の参考文献をご覧下さい。)
<図1>
<表1> 電波方向探知アダプターの特徴
項 目 | AM方式 | FM方式 |
利用原理 | ビームアンテナの指向性 | ドップラー効果 |
受信波処理 | AM検波 | FM検波 |
アンテナ | 4方向(またはそれ以上)のアンテナを電気的に切り替える | 円周上に等間隔で配置された4本(またはそれ以上)のアンテナを電気的に高速に切り替える |
減衰器 | 必要 | 不要 |
受信機改造 | 必要 | 不要 |
受信音(FM波受信時) | 通常どおり | 一定の発信音が混入する |
方向表示 | LED(16〜32個) | LED(16〜32個) |
登米地域アマチュア無線クラブとフォックスハンティング
登米地域アマチュア無線クラブ(以下“登米クラブ”と省略)では,クラブ発足以来,年1回は必ずフォックスハンティングを行っています。
ではこれから,平成11年6月13日(日)に開催された第27回モービルフォックスハンティングを例として取り上げ,その様子について,準備段階を含めてご紹介することに致します。
事前準備
開催日は,毎年6月第2日曜日ということで慣例化しています。その約3ヶ月前から準備作業が始まります。まずは3月中旬の役員会において,日時,競技方法,参加費等について確認・決定をします。案内を雑誌やJARL機関紙へ掲載する関係と,会場確保のため,早めに大綱を決める必要があるのです。会員の皆さんには4月の総会で事後承認をもらいます。総会ではさらに実行委員会組織(今回は担当役員1名ほか4名で構成)を確立します。その後はこの実行委員会が中心になって作業を進めます。開催日前日まで<表2>に示したとおりいろいろやることがあります。なかでもフォックスと本部要員の選定にはいつも頭を悩ませられます。限られたクラブ員の中でやりくりする訳で,仕事や家庭の都合,ハンターでの参加希望などを考慮すると本当に苦慮します。依頼した各局が快諾してくれるのが救いです。また賞品の選定・買出しも一仕事です。
* 近年は特別の事情がない限り5月の最終日曜日に開催しています。また、総会は1月に行っています。(H20.1.14追記)
<表2> 準備日程と内容
期 日 | 項 目 | 内 容 等 |
3月中旬 | 大綱決定 | 日時,会場,競技方法,参加費等を役員会で協議 |
3月下旬 | 広報原稿発送 | 関係各誌に開催案内の掲載を依頼 |
〃 | 会場確保 | 予定会場へ連絡し,必要な手続きをとる |
4月初旬 | クラブ総会 | 大綱と予算の承認,実行委員の選出 |
5月初旬 | 実行委員会 | 仕事分担や準備物・スケジュール等協議大会役員(本部,FOX等)の選定・依頼 |
〃 | DM発送 | 前年までの参加者やクラブ員,ローカルなどへ案内のはがきを郵送 |
5月中旬 | 賞品手配 | ハムショップへ出向き相談,ついでに案内のポスター掲示やチラシの配布を依頼 |
5月下旬 | 弁当手配 | 必要数(推定)を仕出店に予約 |
6月初旬 | 賞品買出し | 賞品その他必要物品の購入 |
〃 | 実行委員会 | 準備の最終確認,当日の配置・日程等確認 |
6月13日 | 大会当日 | 午前7時半から準備開始 本部に必要な主な物品は以下のとおり 賞品,賞状,盾,エントリー用紙,ボールペン,カーボン紙,筆ペン,チェック用紙,無線設備,工具,クラブ会長印,クラブ旗,つり銭,画鋲,ガムテープ,セロテープ,カメラ,フィルム |
「登米クラブのフォックスハンティングは雨が降らない」というジンクスがあります。これまで雨で中止になったことは一度もありません。今回もジンクスどおりで,梅雨の時期とは思えない好天となりました。朝7時半,本部要員3名がさっそく活動開始です。まずは集合場所となっている公民館にV・UHF帯の無線設備を設置します。これはハンターの皆さんやフォックスとの連絡用となるものです。会場へ向かっているハンターの方から呼び出しがある場合もありますので手際良くセッティングします。特にトラブルも無く8時にはスタンバイしました。この無線設備の運用に本部要員の内の1名が当たります。続いて受付の設営です。受付は屋外に長机とパイプ椅子を設置するだけですのであっという間です。あとはエントリー用紙,ボールペン,つり銭などをそろえて待機します。9時受付開始ですが駐車場には早々と数チームが到着しておりハンティングの準備作業をしていました。受付が着々と進んでいるころ,2匹のフォックスが秘密裏に活動を開始します。1匹につき3人の要員です。彼らはあらかじめ選定した場所に移動しスタンバイしますが,その場所は本部にも知らされていません。
開会式
9時半で受付を終了。今回の参加数は12チーム(22名)と大変寂しい状況となりました。ここ数年減少傾向にありましたが,まさかこれほどとは予測していませんでした。昨年度の21チームに対しほぼ半減です。ぼやいてばかりもいられません。受付終了後すぐに開会式です。まず主催者である登米クラブの会長あいさつ,続いて大会実行委員長から競技規則の説明と諸注意,そして選手宣誓と続きます。開会式終了後,全員で記念写真を撮影し,いよいよ競技開始です。
競 技
10時ちょうど,本部からのアナウンスを合図にフォックスが第一声を送出してきました。スタンバイしていたハンターは各々方向探知を開始し,次々と開会会場から出発して行きます。競技範囲は宮城県登米郡内一円です。ハンターの皆さんはどれぐらいの距離を走ることになるのでしょうか。競技時間は2時間,とにかく隠れているフォックス2匹をできるだけ早く発見すればよいだけです。なお,フォックスの電波は「第1FOX1分送信→第2FOX1分送信→休止1分」のサイクルが基本とされ,競技の進行状況により変更されます。今回は後半の1時間について,第1FOX1分・第2FOX1分の交互送信(休止無し)ということになりました。
本部とフォックス
本部ではハンターの皆さんがスタートした後,参加費の集計やエントリーカード(本部用)の確認,賞品の各賞への割り振り作業,そして弁当の準備などをしています。もちろんその間もフォックスの信号をモニターしており,必要に応じ互いに連絡を取り合っています。それにより競技の進展状況を把握し,何らかの指示を出したりします。
さて,一方フォックスの方は,最初のハンターが来るまでは1人がオペレートするだけで少々手持ち無沙汰でいます。心中はちょっと複雑で「見つけてほしいけれど,見つかりたくない!?」といったところでしょうか。それはともかくとして,ハンターが来始めるとオペレーターのほかにもう1人が,チェック用紙とハンター持参のエントリーカードに発見時刻を記入する作業にかかります。そして残りのもう1名が二人を補助します。
競技開始から50分を過ぎたころ,第1フォックスから本部に向け,最初の競技終了チームについて連絡が入りました。早すぎず・遅すぎず,ちょうど良い按配に競技が進んでいるようです。
閉会式
閉会式はスタート地点の公民館内で行います。11時を過ぎたあたりから,競技を終了したハンターの皆さんが戻りはじめました。本部では逐次弁当を配布し昼食・休憩をとってもらいます。最後のハンターが戻って来たのは12時半ごろでした。会場内は参加者の皆さんの会話と笑顔で満ちています。結果は人それぞれですが,とにかく楽しんでもらえたようです。
VYFBな賞品がずらりと並ぶ中,12時40分閉会式が始まりました。成績発表と併せ賞状・賞品が贈呈されていきます。今回は参加チームが少なかったこともあり,上位入賞を果たした方々だけでなく,残念な結果に終わった方々にもFBな賞品が行き渡りました。その後,入賞者の方々から今日のハンティングの状況などをお話いただきお開きとなりました。
参加している皆さんには実に様々なタイプがあります。とにかく遊び(レクリエーション)として楽しむ方,また競技として勝負に賭ける方,はたまた,方向探知装置・アンテナ等のハードウェアに凝る方などなど。その全てであるという方ももちろんいます。参加者には常連が多いのですが,それは一度味を覚えたらやめられない,ということなのかもしれません。私自身,実際何回やっても飽きたなどということはありません。皆さんにも,アマチュア無線のひとつの楽しみ方として是非体験してみてほしいと思います。蛇足になりますが,ハンターは電波を発射しません。従ってハムの免許のない方でも参加可能です。
登米地域アマチュア無線クラブは,そもそもJARL登録の地域クラブであり,特にフォックスハンティングを目的にしたクラブではありません。しかしながら,それはクラブのメインイベントとして,諸先輩方が並々ならぬ熱意と努力を注いで今日まで継続してきたものです。まさに登米クラブの歴史と伝統といえるものです。参加者の減少(表3参照)など今後の開催について不安要因もありますが,なんとか続けられればと考えております。開催は特別の事情がない限り5月の最終日曜日です。時期になりましたらこのホームページ上にも案内を掲載致しますのでご覧の上参加して頂ければ幸いです。
<表3> ここ21年間の参集状況
開催年度 | 開催回 | 参 加 チーム数 |
参加人数 |
平成2年度 | 第18回 | 26 | 49 |
平成3年度 | 第19回 | 33 | 64 |
平成4年度 | 第20回 | ? | 70名弱 |
平成5年度 | 第21回 | 33 | 69 |
平成6年度 | 第22回 | 29 | 62 |
平成7年度 | 第23回 | 30 | 59 |
平成8年度 | 第24回 | 25 | 50 |
平成9年度 | 第25回 | 16 | 31 |
平成10年度 | 第26回 | 21 | 30 |
平成11年度 | 第27回 | 12 | 22 |
平成12年度 | 第28回 | 8 | 10 |
平成13年度 | 第29回 | 13 | 20 |
平成14年度 | 第30回 | 14 | 22 |
平成15年度 | 第31回 | 10 | 17 |
平成16年度 | 第32回 | 8 | 10 |
平成17年度 | 第33回 | 12 | 15 |
平成18年度 | 第34回 | 14 | 19 |
平成19年度 | 第35回 | 14 | 20 |
平成20年度 | 第36回 | 14 | 21 |
平成21年度 | 第37回 | 17 | 20 |
平成22年度 | 第38回 | 21 | 26 |
以前は1チームほぼ二人平均であったが,最近は一人で参加するハンターが多い。
平成11年度以降、参加チーム数が少ない状態が10年ほど続いていたが、21年度・22年度は増加に転じた。
参考文献
● CQ出版社 CQ ham radio 1991年6月号 P.267〜
● 〃 〃 1991年9月号 P.286〜
● 〃 〃 1992年6月号 P.274〜
● 山海堂 フォックスハンティング入門(西本陸雄著)